STORY
フィルムメイカーの井上春生がジョナス・メカスに会ったのは2018年の2月。別れ際に「君は次に何を撮るのだ」と聞かれる。その11ヶ月後にメカスは逝去。その幻影をマンハッタンとブルックリンに追いかけた。時はコロナウイルスがNYCに襲いかかる直前の2020年1月末、間一髪の渡航だった。実験映画界の巨人と言われたメカスの一周忌に、井上は盟友であり日本の現代詩の世界を切り拓いた詩人・吉増剛造にレクイエムの詩を託す。その詩が劇的に誕生する様子が井上の手によって丹念に描かれていく。映画の企画/プロデュース/監督/配給を全て担当する。国際映画祭で50冠を成し遂げた。
Sebastian Mekas
ジョナス・メカスの長男。映画の中で吉増剛造と感動的な再会をする。ジョナスのかつての作品に少年時代の様子がしばしば垣間見える。映画プロデューサー、アーティストであり、俳優。父ジョナスの映像や声の遺産を守っている。フラグメンツ オブ パラダイスが最近のプロデューサー作。
佐野元春
80年代から言葉と音楽の関係を突き詰めてきた日本ロック界のカリスマ。井上春生の前作「幻を見るひと」を見た経緯から、NHKの「SWITCH」に出演(井上/企画・演出)、「気品のある詩人、歌い手が、ここにいるんだなという直感が働いた」と語る吉増剛造と世代の違う2人が詩で共鳴し話題を呼んだ。本作の主題曲を提供するに至る。映画のプロモーション音楽ビデオも。過去、ニューヨークでジョナス・メカスと時間を共にして自ら話を聞き、自身の雑誌Thisに伝説となる貴重で詳細な記事を執筆している。
PHOTO©️DAISYMUSIC
吉増剛造
日本現代詩の最前線を切り拓いてきた日本を代表する詩人(1939-)。2023年は「西脇順三郎賞」初回受賞、「井上靖記念文化賞」など84歳にして吉増イヤーの趣きになっている。監督の井上春生とは前作「幻を見るひと」でタッグを組み国際映画祭10冠に輝く。本作で50冠39の賞を受賞。日本芸術院会員、文化功労者。
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新文芸坐舞台挨拶再録 2023.4.9
ゲスト:いとうせいこう氏
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Film festival results
Specifications
Director Statement
Director Biography
大学生からの寄稿
2022年10月試写会
井潟瑞希/東京大学教養学部教養学科3年-2022年10月時
加藤ひなの/武蔵野美術大学 造形学部 芸術文化学科4年-2022年10月時
井上国太郎/東京大学文学部宗教学宗教史学専修3年-2022年10月時
メッセージ
松尾潔 音楽プロデューサー/作家 平井堅のブレイクの仕掛け人、CHEMISTRYの生みの親
ひとりの詩人が、先達にして盟友の一周忌にNYに赴き悼む。作りはシンプルだ。だが、この映画はたまらなく胸を打つ。なぜか。詩人とは吉増剛造であり、盟友とはジョナス・メカスだからである。
藤沢周 作家 「ブエノスアイレス午前零時」98年で第119回芥川賞受賞
誰もが見たことがあるのに、見たこともない世界を発見する詩人と映像作家は、まるで愛し合う者たちのようだ。その特権である眼差しと指先が、また世界を新しくする。
芝山幹郎 評論家/翻訳家 映画評論界の第一人者
吉増剛造は幻視家にして幻聴者だ。病んでいるのではない。妄想が人一倍激しいのでもない。人に見えない物質を見て、人に聞こえない声や音を聞き取る。そのアンテナが桁外れに鋭い。
森村泰昌 美術家 現代美術界のトップランナー
此岸と彼岸のはざまでなされる両者間の交信は、やがてゴーゾーさんを深刻な眩暈に巻き込んでいく。そうこうしているうちに私自身にも眩暈が感染する。
城戸朱理 詩人 現代詩のトップランナー/2022年英訳詩集が米ワシントン・ポスト紙の「今年の詩集ベスト5」に選出
吉増剛造は死者の声に耳を澄まし、詩を紡いでゆく。その恐るべき瞬間を、カール・テオドア・ドライヤーの『奇跡』のように『眩暈 VERTIGO』は映し出す。
羽生善治 棋士 単行本「盤上の海、詩の宇宙」で吉増剛造と対談
ジョナス・メカスと吉増剛造。時間と空間を超えて交差する瞬間に何が生まれるか想像がつかない創造を期待せざるをえない。今までに見たこともない色彩鮮やかなタペストリーが生まれるのではないか。
アルバート・ニグリン ニュージャージー国際映画祭審査委員長/ラトガース大学教授
メカスを知っている私としては、この映画は懐かしい記憶をくすぐり感動的なものだった。偉大な実験映画への巡礼だ。メカスはそうした挑戦的な前衛映画のゴッドファーザーでもあり、この映画はその魅力を詩的に解明し、かつそこに共に存在するという金字塔を打ち立て、時代に残る映像詩となった。敬意を込めて。
今福龍太 文化人類学者 サンパウロ大学など各国で客員教授を歴任 東京外国語大学名誉教授
メカスはたえず何かを懐かしんでいる。何かがいま叶えられないことを哀しんでいる。そこに何かがないこと、そこに会いたい人がいないこと、そこが居たい場所ではないこと。
古川日出男 作家 『LOVE』(2005)三島由紀夫賞『女たち三百人の裏切りの書』(2015)野間文芸新人賞/読売文学賞受賞
亀裂オリエンテッドな二人が、いっぽうの死を越えて何を交感・交流するのか? ただただ大切なドキュメンタリーが起ちあがろうとしている。
ミシェル・アーサー フェリーニ記念映画祭審査員・シナリオライター
私が最初の映画を撮るためにニューヨークに行ったとき、ブルックリンでジョナス・メカスが住んでいた場所を知りたいと思い散策をしました。それがデジャブとなって圧倒的に、しかも静かに眼前に広がったんです。
佐藤文香 俳人 2024年中原中也賞受賞、早稲田大学在学中に第2回芝不器男俳句新人賞対馬康子審査員奨励賞を受賞
詩人の「メカスさん」という呼びかけを聞き続けると、自分がメカスになったように感じた。おのずと、自分にも次の作品が描ける気がしてくる。文字にしたい。声にしたい。
井戸沼紀美 CINRA.NET編集部 上映イベント『肌蹴る光線 ーあたらしい映画ー』主催
メカスさんにお会いして痛いほど感じたのは、何もごまかしがきかないということ。ハリボテのような言葉はすぐに流され、奥底の、まだ形を持たないような感情だけが見透かされている感覚だ。真っ直ぐに目を見つめられ、涙がぼろぼろ溢れ出た事があった。その眼差し、声の震え方、手の皺。
佐々木美佳 映像作家・文筆家 映画『タゴール・ソングス』(2020)監督
メカスが残した息子のセバスチャンが生きた人間として我々の前にあらわれる時、二人の面影が交差する。ジョナス・メカスが蘇ったような不思議な錯覚を覚え、胸が熱くなる。
小口詩子 映像作家 武蔵野美術大学映像学科教授
井上監督の前作『幻を見る人』は驚異だった。時代を生きた故の表現者たちの魂、化石や樹木、水の命声と共鳴する詩人の身体を通し、奇跡の光景を幻視した。次は、レンズ越しの異境に故郷の幻を見続けたメカスさんと生者の交信に耳を澄ますの。
岡 英里奈 作家/編集者 『三田文学』編集者
〈私が死んだあと〉の声を浮かび上がらせる二人が、どう響き合うか。あたらしい世界の層がひらかれることを楽しみにしている。
パンフレット
映画「眩暈 VERTIGO」パンフレット増補版
¥ 1,500
定価1,500円は税込です
送料:レターパックライト 370円がかかります
OPP袋(透明ビニル)に梱包します
到着まで数日かかります
領収書は購入後に自動発行されたものだけになります
ご了承のうえ、ご購入下さい
寄稿者
「人と人影が交信する」
芝山幹郎/評論家
「沈黙の中に立ち現れるもの」
城戸朱理/詩人
「つくり手の私たちへ(寄稿 +俳句三句)」
佐藤文香/俳人
「リトアニアに帰ったメカス(リトアニア写真+エッセイ)」
津田直/写真家
「眩暈を愉しむ」
松尾潔/音楽プロデューサー・作家
「これは悲劇ではない」
森村泰昌/美術家
「眩暈に寄す(詞書+短歌五首)」
水原紫苑/歌人*
「(仮)未確認飛行編隊」
帷子耀./詩を追う者*
「失われた極小言語の薄霞のなかへ」
今福龍太/文化人類学者*
*印が新たに加わりました数量近日公開
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